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2020.08.12

コラム

飛行機の重力

お盆休みがはじまりましたね。
今年は例年通りとはいかないですが、遊園地で体験する重力についてお話をひとつさせていただきたいと思います。

ジェットコースターに乗った経験のある人は、急降下から上昇に転じた時点で、瞬間的に自分の体重の数倍の重力が体全体に重たくのしかかっているのを感じたことでしょう。飛行機でも降下から上昇に移行するときにはこの重力に耐えながら操縦をするわけですが、水平旋回(高度を変化させずに方向のみを変えること)でも重力の増加は発現します。この現象の説明によく使われるのが、バケツの水です。水を入れたバケツを手でぶら下げて自分を中心にグルグル回したら、ゆっくり回している時よりも速く回してバケツと地面の距離が大きくなった時の方がぶら下げている手にかかる重力は大きくなります。

  旋回中の飛行機にかかる重力は、次の式で表されます。

  G=1/cosθ

  G:重力

  θ:飛行機の傾き(バンク角)

   この式を当てはめますと、飛行機の傾き(バンク角)が60度の水平旋回時は2倍の重力が、バンク角45度の水平旋回時は約1.4倍の重力が、バンク角30度の水平旋回時は約1.16倍の重力を体に受けることになります。

   旅客機が旋回する時のバンク角は、緊急時を除いてせいぜい30度程度ですから、特に重力の変化に敏感な人を除いて乗客はあまり旋回中の重力の増加は気にならないのでしょう。

   乗客に重力の増加を感じさせない程度のバンク角、ここではバンク角25度の旋回を例に飛行機の旋回半径を考えます。

   飛行機の速度:360ノット(約655㎞/h)の場合の飛行機の旋回半径は、

  4.0マイル(約7.4㎞)、飛行機の速度:280ノット(約520㎞/h)の場合は

  2.5マイル(約4.6㎞)となります。

   さて、航空自衛隊のブルーインパルス(正式には戦技研究班)のアクロバットショーをご覧になった方も多いと思いますが、ブルーインパルスが展示するアクロバットの科目の中では戦闘機の傾き(バンク角)がほぼ垂直になることが多々ありますよね。上の式を当てはめますと、バンク角が80度の旋回時は体に約5.88倍の重力がかかっています。
私が飛行安全幹部課程の学生として航空自衛隊航空医学実験隊のシミュレーターで体験した最大の重力は5倍ですが、この時はブラックアウトしました。5倍もの重力が体にかかりますと、身体に受ける力は体内の血液と諸器官を頭の方から下の方へ移動させるように作用します。脳は血液の循環による酸素の補給を絶え間なく必要としますので、パイロットが失神することなく耐えられる重力と時間には生理的な限界があります。
重力の結果生じる脳への血液循環の減少はパイロットの視野を狭めて目の前がまず灰色になり、次いで真っ暗になります。この状態をブラックアウトといい、非常に危険な状態に陥ることを体験できました。
戦闘機のパイロットに聞いた話ですと、体調不良の状態で搭乗すると、3倍の重力がかかってもブラックアウトすることがあるとのことでした。

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